【要注意】自分で作ったAIチラシが「いい出来」に見えるのは、イケア効果かもしれない

ChatGPTにお願いしたら、それっぽいチラシがあっという間にできた。何回か直しているうちに、だんだん自分のイメージに近づいてきた。
「これ、いい出来じゃない?このまま印刷に回そう!」
……ちょっと待ってください。
ChatGPTでチラシを作る方法と、その限界については、前の記事で書きました。今回は、もう一段手前の話です。
そのチラシ、お客様が3秒見て、「結局、何のチラシ?」となりませんか?
しかも厄介なのは、作った本人がそれに気づけなくなっていることです。作り手の「良い」と、受け手の「良い」は、意外とズレています。
なぜ、作った本人だけが「いい出来」に見えてしまうのか。そのヒントが、心理学の「イケア効果」です。
・自分で作ったAIチラシが「いい出来」に見える理由(イケア効果)
・見た目はきれいなのに「何のチラシ?」になる4つのパターン(美容室チラシで検証)
・自分でできる、第三者の目を入れる3つの方法
作った本人だけが「いい出来」に見える理由
2012年の研究では、IKEAの家具の組み立てや折り紙、レゴなどで実験が行われました。
素人が作ったものでも、専門家が作ったものと同じくらいの価値があると評価し、「他の人も同じように評価するはず」と思い込む傾向も見られました。ただしこの効果は、最後まで作り上げたときに出るもので、途中で終わったものには出ませんでした。
では、AIで作ったチラシでも起きるのか。同じことを確かめた研究は、私たちが調べた範囲では見つかっていません。
ただ、ChatGPTでチラシを作る流れは、かなり近いです。
- 何を書くか考える
- 出てきたものを選ぶ
- 気に入らなければ何度も直す
- 最後に「できた!」と採用する
組み立てほど手間はかかりませんが、起きていても不思議ではない、と私たちは考えています。
前の記事で「思ったより全然うまくいかない」と書きました。うまくいかないから、何度も直す。その手間が、かえって愛着を生んでいるのかもしれません。
気づけなくなると、「何のチラシ?」になる
作った本人は、頭の中で補いながらチラシを見ています。お客様との違いは、こうです。
さらに、AIは「それっぽく整える」のが得意です。見た目はきれいに仕上がります。そのぶん、キャッチコピー、写真、特典、地図、電話番号と、全部が同じ強さで並び、一番伝えたいことが埋もれてしまうことがよくあります。
当社にも、お客様が「AIで作ってみました」と見本をお見せくださることがあります。きれいに見えるのに、何を伝えたいチラシなのかがよくわからない。そういうものが少なくありません。そして、作った本人は、そこに気づいていないことがほとんどです。
実例:前の記事で作った美容室チラシを、プロの目で見てみる
前の記事で、ChatGPTに作ってもらった美容室のチラシがこちらです。番号は、このあとの指摘に対応しています。

正直、パッと見はよくできています。写真はきれいで、文字も崩れていません。作った本人が「いい出来!」と思うのも、無理はありません。
だからこそ、あえてプロの目で見てみます。
① 「一番伝えたいこと」が3つある
店名の「Rise」、「NEW OPEN!」、「20%OFF」。どれも大きく、同じくらい強く目に入ります。
このチラシで一番伝えたいのは、店の名前なのか、オープンしたことなのか、割引なのか。決まっていないので、見る人の目が3か所を行ったり来たりします。
② 頼んでいないことが、勝手に足されている
前の記事でChatGPTに伝えたのは、店名、20%OFF、期間、所在地、電話番号、営業時間、ターゲット、雰囲気だけです。でもチラシには、こんなものが入っています。
- カット・カラー・トリートメント・ヘアセットの4つのメニューと説明文
- 「他の割引との併用はできません」という注意書き
- 最寄り駅からの徒歩分数と、地図
- QRコード
お店に実際にないメニューや、決めていない併用ルールが、「それっぽく」書かれているわけです。AIが描いた地図やQRコードが、実際の場所やリンク先と合っている保証もありません。
作った本人は、「全部入っていて完成度が高い」と感じてしまいます。確認するより先に、愛着が湧いてしまうのです。
③ 「この店だから」の理由がない
「あなたらしさを引き出す」「女性のキレイを応援します」。どこの美容室でも言える言葉です。
近所の人がこのチラシを受け取ったとき、たくさんある美容室の中で、この店に行く理由が見当たりません。
④ してほしい行動が3つある
電話で予約、QRコードから予約、地図を見て来店。どれも載っています。親切に見えますが、「結局どうすればいいの?」と迷う人も出ます。
ここまでは、実際に配って反響を見たわけではなく、あくまで制作の目で見た見立てです。ただ、言葉が足りないのではなく、足しすぎて「結局これ」が消えていることは、見ればわかるはずです。
直すなら、たとえば「オープン記念20%OFF」を主役に決めて、店名と写真は脇役にします。メニューは実際に出したいものだけに絞り、予約は電話1本にする。それだけで、同じチラシでも「何のチラシか」が一瞬で伝わるようになります。
プロは、どこから直すのか
今のチラシで見たように、プロがまず見るのは、デザインの細部ではありません。
① 誰に、何を、どうしてほしいチラシか
「このチラシを見た人に、何をしてほしいのか」を1つに決めます。電話をしてほしいのか、来店してほしいのか、QRコードを読んでほしいのか。ここが決まっていないと、どんなにきれいでも反響は出ません。
② 一番伝えたいことが、最初の3秒で目に入るか
大きさ、位置、余白で、読む順番をつくります。全部を同じ大きさで並べてしまうと、どれも目に入りません。
③ 削れるものはないか
AIは盛り込むのが得意ですが、チラシは引き算が大事です。「あったほうがいい情報」と「なくても困らない情報」を分けます。
この3つを整えたうえで、連絡先・料金の文字、法令に触れる表現、印刷用のデータかどうか、を確認します。ここは前の記事に書いた通りです。
当社が制作したチラシのデザイン実績を見ていただくと、「プロが直すとここまで変わるのか」がわかります。
チラシ制作のご相談としてお気軽にどうぞ。
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自分でできる、第三者の目を入れる3つの方法
自分で作ったチラシを、自分の目だけで評価するのは難しい。そうわかったうえで、自分でもできることがあります。
チラシが伝わったあとの話は、チラシの反響率の目安や効果的なチラシの作り方とデザインのコツでも解説しています。
まとめ
- 自分で作ったものは、自分にだけ良く見える(イケア効果)
- AIで作ったチラシでは「何を伝えたいのか」が埋もれやすく、本人は気づきにくい
- 初めて見る人に5秒見せる、時間を置く、「伝えたいことは1つ」を書く、で第三者の目を入れる
AIでチラシを作ること自体は、悪いことではありません。ただ、「伝わるチラシになっているか」の判断を、自分の目だけでやらないでください。
「こんなチラシを作りたい」というざっくりしたイメージだけでOK。
様々な業種で培ってきたノウハウで、集客できるチラシをご提案します。
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参考:Norton, Mochon & Ariely (2012) “The IKEA Effect: When Labor Leads to Love”, Journal of Consumer Psychology 22(3)